桐箪笥の製作工程
加茂総桐箪笥ができるまでを解説
加茂桐箪笥は細やかな加工が多いことが特徴です。素材の桐板を作るだけでも、何枚かの板をはぎ合わせる技法を駆使し美しい一枚板に仕上げます。
特に表裏の柾目を特殊な技法で合わせて無垢板の味わいを出すなど、繊細でとても手間のかかる工程を経ています。
更に、加茂桐箪笥では、鉄釘を一切使わない組接ぎ、ホゾ接ぎ、木釘などの各種接合技法の伝統も守られています。
生地の塗りは比較的シンプルに抑え、機能性を重視しながらも、淡黄色の桐本来の杢目の美しさをを活かす様に作られています。
(1) 造 材徴
加茂桐箪笥は他の生産地と違い、国産桐の原木を伐採する所から一貫作業で行います為、比較的に材料の選定が容易となります。
伐採・製材後は約3年間天然乾燥させることによってじっくりと桐材の渋抜きがなされ、製品に変色や狂いが生じなくなります。
また、桐材は他の樹種と比較しても成長が早く、樹高は一年目で4~5メートル程になります。
その反面、成長が早ければ枝も大きくなりますので、軟らかい木材のため害虫が付き易く傷になり易いという側面もあります。
そのため無傷の桐はほとんど皆無で、1本の桐のうち3分の2が難材、加茂桐箪笥として使われる良材は3分の1程になります。
その少ない良材を最大限活用するために、製材の際には細心の注意と熟練の技が要求されます。
(2) 木取り
各部材は適材適所に選別され、経験を積んだ職人が、木目合わせと色に気を配りながら同質の材をより分け組み合わせていきます。
この工程では、何枚かの桐板をはぎ合わせて1枚の板が作られます。この時、一直線に柾目の通った無垢板に見えるように「杢目直し」という加工を施します。
これは柾目に沿って薄く割った木材を、芯になる木材の両面に何枚かずつ貼り合わせていくという作業です。
このようにして、表柾材、裏柾材、芯材をつくり、それらを合わせて各部材を作っていくのです。
(3) 組み立て
加茂桐箪笥は「木釘」を打ち込む独特な伝統技法で堅牢に組み立てられ、本体が仕上げられます。
接合方法としては「組接ぎ」や「ホゾ接ぎ」などが挙げられます。
「木釘」以外にも、側板と足の部分との接合には「縫い釘」という10センチくらいの両端のとがった竹釘が用いられます。
(4) 引き出し(盆板)扉加工
引き出しや扉はカンナで調節しながら、隙間無く本体に入れ込んでいく加工が施されます。
引き出し(盆板)づくりは、前板の仕込みからはじまります。引き出しの前板を、入れ込む予定の棚板に寸法を合わせ、隙間の無いようにカンナでならしていきます。
同様にカンナで調整された側板と向板(引き出しの奥の部材)は、木釘などを使用して箪笥本体と同じ技術で組み立てられます。
(5) 塗装
木地を調整してから「うづくり(藁を棒状に束ねた、たわしのようなもの。木材、ことにキリの表面を仕上げるときに使用)」かけをし、杢目を立てます。
その上に砥の粉と夜叉の実の混合液で何回か刷毛塗りします。自然乾燥した後、杢目に沿って蝋を均一にかけ、仕上げます。
砥の粉と夜叉の実の混合には、職人の勘と熟練により大変な技術を要します。 また、刷毛使いなども3年以上経験しないと一人前として認められません。
(6) 金具付け
桐箪笥の表情は金具の意匠次第で大きく変わります。
箪笥金具の種類は、彫金、鋳造、堆朱、七宝など多彩で、お好みのデザインをお選びいただけます。
熟練の職人の手で慎重に、引き手金具、蝶番、錠前が取付けられ、ようやく加茂桐箪笥が完成します。